dollycat88's diary

活字中毒者のきままな読書日記

『かっこうの親 もずの子ども』 テーマを盛り込みすぎたのが惜しい!

タイトルが気になって、図書館で予約していたこの作品・・・

ようやく順番が来て読めたのですが・・・

 

・『かっこうの親 もずの子ども』 著者:椰月美智子 

 実業之日本社

力作であることは充分に認めます。

シングルマザーの子育ての大変さをリアルな生活実感で描いた

良作品といえると思います。

 

しかし、しかし・・・・

 

著者の描きたいことが多すぎて、一冊の作品の中に全部

盛り込んでしまった・・・のが非常に残念でなりません。

 

この作品の一番大きな核、というべきものは

ヒロインの有坂統子の4歳の息子、智康の生まれたいきさつなの

ですが(離婚の原因・遠因にもなっている)

それ以外にも様々な生活事情を300頁足らずの一冊の本で

語りつくそうとするのは非常に難しいと思うなあ。

 

スタイルとしては、長編小説というよりも

「連作短編」の形が最もふさわしいように感じました。

そうすれば、各短編ごとに中心となるテーマが明確になり、

トータルで読むと、ひとつの大きな物語になるタイプ、ね・・。

 

出版社勤務の統子は、夫である阿川の希望もあり不妊治療の末に

智康を出産します。

人工授精や体外受精、顕微鏡受精など、不妊治療そのものは

別に珍しくもないのですが、問題は夫の阿川の精子所見に

問題があったことなのです。

子どもを授かることに積極的な夫は、自身がTESEという

手術をしてまで努力しても結果はやはりダメ・・・

それでも、どうしても子どもを希望するときに

例えば、里子という選択肢も有ると思うのですが・・・

 

・・・・・・・・・・・

 

夫が望んだのはAID(非配偶者間人工授精)でした。

そうして生まれたのが智康です。

遺伝学上の父親は秘せられています。

若くて健康な当該病院の医学生で、提供は一度だけという

条件付だそうですが・・・

 

う~ん、この辺りのテーマだけで長編小説一冊になりそう・・

本作品では、この夫婦の葛藤や夫の異常さ?にもペースが

割かれてはいますが、

主要テーマは母である統子と息子の生活になっています。

そうして、統子は偶然に目にした自社の旅行雑誌の中で

海水浴をテーマにした特集ページの写真を見て驚愕します。

 

そこに写っていた双子らしい男の子の顔が・・・・

息子の智康に生き写し・・・!

 

物語の半ば頃から、統子はこの子達に会いに行こうと

決心して、撮影地である五島列島に向かうのですが・・・

五島列島中通島の描写は素晴らしく、この本を読んだあと

私自身も行ってみたくなった程でした。

この双子の男の子たち&母親との出会いが、後半の大きな

山場となります。

 

確かに、物語としてよく出来てはいるのですが、著者自身が

描きたいことが多すぎて、無理に詰め込みすぎたか・・・

という印象はぬぐえません。

細部に亘るリアリティはなかなかのもので、ママ友との関係や

子どもの身体のこと、病気のこと、子供同士のけんかのこと等

丁寧に説得力をもって描かれているのは素晴らしいのですが。

 

こういう作品は、映画化でもされると一気にブレイクするもの

だけれども、さあ、どうなるでしょうか?

著者の椰月氏は既に9冊ほどの著書を出しておられますが

また何か読んでみようかなあ・・・・

 

 

 

 

『紅葉街駅前自殺センター 』自ら死を選んだけれど…リアリティ溢れる近未来の佳作

紅葉街(もみじまち)駅前・・・そのあとに続くのが

自殺センター 

 

駅前・・商店街でも公民館でも市民センターでも図書館・・

でもなく 「自殺センター」?

妙にそそられるタイトルではありませんか。

 

・『紅葉街駅前自殺センター 』  著者:米本正記  新潮社

 

著者の名前は初めて知りましたが、これがデビュー作のようです。

現在は、WEBページのライターさんであり、書き慣れているの

でしょうね、文章は達者で読みやすい。

 

主人公の悪夢が導入部になって始まります。

30代の一人暮らしと思われる男性、土井洋介は目覚めた後に

意を決して電話をかけて予約を入れます。

 

紅葉街駅前自殺センター に・・・

 

この世界では、自死を国が管理しており、きちんと手続きを

踏めば自死が合法的に認められているようです。

 

一部に反対は根強いものの、各地に「自殺センター」が

設置されて、あって当然なものと受け入れられている世界・・

 

おどろおどろしい描写や、グロテスクな表現は何一つ

ありません。

自殺を申請して、許可され執行されるまでの日々が

淡々とごく自然に綴られています。

 

申請者は、まず別館にて5回のカウンセリング?を受けなければ

いけません。

さまざまな事務的な手続きを進めながら、本当に死にたいのか

その都度、担当係官から「考え直す気はないのか?」と

問われます・・・

 

そして、すべての手続きを終え、身辺整理を済ませた後には

いよいよ「自殺センター」に入所して死を待つのですが・・・

 

一番最初のカウンセリングから、日を追うごとに主人公の

置かれた境遇が、読者にも分かってきます。

 

無差別殺人の通り魔に一歳の息子を殺され、その後、

妻と離婚・・・

育った境遇、父母のこと、自殺した兄のこと・・・

 

しかし、全体のトーンは決して暗くは無いのです。

日常的が描写が丁寧で、主人公の気持ちがブレないせいかも

しれません。

 

自殺センターの担当係官は、氏名ではなく「紅葉街G4」とか

「紅葉街K3」のようにコード名で呼ばれていますが、

この二人の係官が、おかしいほどリアルなんですよね。

 

よく、公務員さんでありがちな2つのタイプ、そのままに

描かれていて「あ~、いるね、こういうお役人・・」と

思わせるような「硬」と「軟」のタイプ。

 

完全に受理されるまでも、書類・書類・申請書・認印・・・

本人も家族も徹底的に調べられた上で、審査は進みます。

「はい、そこに住所、名前、ね」

よくあるお役所の風景そのものなんですが・・・

 

現実にはありえない小説世界なのですが

この「自殺センター」が、ひょっとしたら、自分の住んでいる

街にもあるのではないかと思わせるような気がしてくるのは

細部にまで行き届いたリアリティがあるからでしょうね。

 

こういう小説で、一番難しいのは「終わらせ方」です。

 

最後の最後になって、プロローグの悪夢や地元で起こった

連続殺人事件などが融合してカタスタロトロフィを迎えます。

 

もう少し、この章にスペースを割いて欲しかったなあ、という

気持ちもあるのですが・・・

少々、力技で押し切りすぎたな、という部分も有るような気が

するのですが・・・・

しかし、希望を感じさせる手法は見事です。

 

全然関係はないのですが、

ハリー・ポッター』シリーズの最後を思い出してしまいました。

 

ハリーとヴォルデモードが一緒に塔から落ちた後に

ハリーは、この世ならぬ世界に入り込んでしまいますよね?

そして、そこで亡くなったはずのダンブルドア校長に

出逢います・・・

 

あっ、こう書くとやはりネタバレなのでしょうかw

 

読了後に知ったのですが、この作品は

第八回新潮エンターテインメント大賞受賞作でした。

著者、米本正記氏、次回作にも期待大です!

 

 

『私と踊って』…きらめく恩田陸ワールドの詰め合わせ♪

恩田陸氏といえば・・・

2005年に第二回・本屋大賞を受賞して映画化もされた

 

・『夜のピクニック』 新潮社  新潮文庫

 

を思い出される方も多いでしょうね。

学園物の青春小説と言ってしまえばそれまでですが

10代の頃でしか味わえなかったような、せつなさや郷愁にみちた

懐かしささえ覚える良書でした。

もう、あの頃には還れないトシになってしまいましたがw

大学時代、もしくは20代の前半位の年齢で読んでみたかったなぁ。

 

私が初めて読んだ恩田作品はこちら↓ 氏のデビュー作です。

 

・『六番目の小夜子』 新潮社  新潮文庫

 

ホラーなのかファンタジーなのか・・・それともミステリ?

高校生活が舞台となっているので、学校の怪談ものか?とも

思って読み始めたのですが、出来はいまひとつ…と感じたかな。

作者の才能というよりは、異能さを感じさせはしましたが。

 

その後は特に気にもかけなかったのですが、

たまたま、その頃続けて読んでいた早川書房のシリーズ

(ハヤカワSF・Jコレクション)に

恩田陸氏の作品がありました。

 

・『ロミオとロミオは永遠に』 早川書房 ハヤカワ文庫JA

 

これが面白くて面白くて・・・!

SFの近未来ものですが、化学物質や産業廃棄物で汚染されきった

地球になぜか日本と日本人だけが居残り、ひたすら汚染物質の

除去をさせられている世界・・・。

(他の国の人々は、月に移住しています)

そんな、P・K・ディックばりの設定で始まる物語です。

 

何の希望も持てない社会の中で、ただひとつ、残されたエリート

への道は「大東京学園」の卒業総代になること!

過酷な競争を勝ち抜いて、入学したアキラとシゲルですが・・・

この「大東京学園」の授業や試験というのが想像を絶する

メチャクチャなもので、後半が彼らの脱走劇になっています。

「ノスタルジーの作家」と呼ばれる恩田陸氏の、失われた昭和

へのオマージュ作品・・・好きです。

 

おっといけない・・・

今回は『私と踊って』でしたね。

 

短編集です。

SF・ホラー・ミステリ風味わいの小品・ショートショート

他の恩田作品とリンクした短編、などなど・・・

さまざまな味わいで、恩田ファンには充分に楽しめるものでした。

 

個人的には・・・

『少女曼荼羅』が最高だったかな?

短編では惜しいSF設定作品なので、この設定と世界観で

ぜひとも長編を書いて欲しいものです。

だって、ドアを開けて外に出る度に世界が変わっているんだよ?

誰かが「世界」を動かしているらしいのですが・・・?

 

最後の作品、『東京の日記』は、外国人が書いたという設定なので

横書き・左開きで読む作品です。著者が後書きで

 

「東京と和菓子と戒厳令というネタで三題噺みたいに

 出来上がったのがこれ」

 

と記しておられますが・・・

2010年・夏に書かれたこの作品、いま読んでみると結構

コワイですね。

不気味な迫り来る足音が身に迫ってくるような・・・

 

著者自身も

「シャレにならない内容で読み返して冷汗を掻いたほど」

と語っておられますが、テーマとしては悪くない・・・です。

現実には厭ですが、あくまでも小説世界のモチーフなら・・・!

 

あと、オマケのような小品が1作、なんとカバー裏にありまして

全体としては、センスの良い一冊に仕上がっていました。

 

先月発売の長編『夜の底は柔らかな幻』は、現在図書館で予約中。

待ち人数は30名ほどなので、読めるのは当分先になりそうです。

恩田氏にしては珍しいダークファンタジーだそうで、期待大!

 

 

 

 

 

 

『猫と庄造と二人のおんな』& 『牝猫』・・・ 妻よりも猫を選んだ男たち

本日はめでたいw「猫の日」なので

猫にちなんだ作品を・・・

 

極私的には、タイトルに挙げた2作品が猫の登場する文学作品の

東西両横綱だと思っています。

 

ちなみに、どちらの作品も、作者が大変な猫好きで

あることが知られていますね。

 

 ・『猫と庄造と二人のおんな』 谷崎潤一郎 新潮文庫

 

 

 いわずと知れた文豪・谷崎潤一郎の中編小説。

 軽く書かれた好作品で、谷崎文学の中では実はコレが

 一番好き♪と言う方も多いかも?

 

 ・『牝猫』 コレット  岩波文庫

 

 コレットの作品では『青い麦』が一番知られているかも

 しれません。ひとりの少年の美しい中年女性と清純な少女への

 恋心をひと夏のバカンスで描いた美しい小説です。

 しかし!猫好きにとっては『牝猫』が一番でしょう。

 

 どちらの作品にも共通しているのは・・・

 

 男性は、妻よりも猫を選んだ

 

 ↑コレでありますw

 

 いやいや何とも乱暴に言ってしまいますが、2作品とも

 一言で表現してしまうとこうなりますので(冷汗)

 

 『牝猫』に登場するアランとカミーユは新婚ほやほやの若夫婦。

 『猫と庄造と~』の主人公・庄造にいたっては、前妻&現妻とが

 いるのですが・・・

 

結婚以前から夫に愛されている猫ほどには、妻は愛されない。

 まあ、はっきり言って、猫の魅力には負けてしまうんですよ。

 

 また、どちらも

 この物語の主人公は、人間なのか猫なのか?と

 思わせるほど猫が魅力的に描かれています。

 

 猫のサハ(Saha)とリリーちゃん

 はい、私もあなた方の魅力には負けますわ(キッパリ!)

 

 猫好きの私としては、この両作品に深く深く敬意を表したい

 ものです。

 

 

 ところで・・・

 昨日は、恩田陸氏の短編集を読んでいたのですが

 

 ・『私と踊って』 恩田陸  新潮社

 

 偶然ですが、この短編集の中の一編(ショートショート)に

 飼い猫から愛を告白された幸福な幸福な男性が登場します。

 ネタバレで申し訳ないのですが、やはりこの男性も

 

 !!! 妻よりも猫を選んだ !!!

 

 いやはや、猫の魅力、畏るべし(爆笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アスクレピオスの愛人』下世話で俗っぽい医療笑説にガッカリ…

アスクレピオスは・・・

ギリシア神話の医学の神さまのことです。

アスクピレピウスとも表記されますが、

再生のシンボルである蛇がまきついている杖を持っています。

 

ちなみにWHO(世界保健機構)のシンボルマークは

国連のマークの上に、アスクレピオスの杖が描かれています。

 

告白しますが、かって私は林真理子氏の作品のファンでした。

活字中毒者的には黒歴史と呼んでもいいでしょうねw

 

何しろ、読書好きの友人知人から

「あなた、林真理子なんか読んで恥ずかしくないの?」

と嘲笑されたこともありましたからww

 

でも、大丈夫。

今では目も覚めましたから(キッパリ!)

 

まともに読むに値しないイロモノ作家として

認識しています。

(ファンの方には申し訳ないのですが)

 

いや、別にイロモノ作家でも、キワモノ作家であろうとも

別に構わないのですが、林氏は一応は直木賞をはじめとして

幾つかの文学賞の選考委員を務めておられるのが

何とも・・・(以下自主規制)

それに、御本人には到底まともな読解力が・・・(以下自主規制)

 

もちろん、作家として難があろうとも読み巧者であるならば、

そして立派に選考委員としての役目を果たしてくれるのなら

ともかくとして

2002年の横山秀夫氏の『半落ち』に対するピントのずれた批評には

本当に幻滅しました。

その後も、横山氏の読者に対してまでも侮辱してくれましたから(怒)

 

いやいやいや、今回は氏の「自称・医療小説」です。

 

・『アスクレピオスの愛人』 新潮社

 

 読書サークルを主催する知人に、毎月の読書会用にどうかしら?

と尋ねられ、わざわざ貸してくれたので、久しぶりに読むはめに、

いや、読むことになりましたw


なんでも、「平成の白い巨塔」を狙ったマリコ先生初の

本格的医療小説だとか。


WHO勤務の女性医師をモデルにしたという触れ込みで

実際にモデルとなった医師にも会って話をしたとか・・・

どのように描いてもらっても大丈夫とお墨付きを頂いたとか?


医療をテーマにした小説では、

海堂尊久坂部羊帚木蓬生諸氏、最近では霧村悠康氏など、

医師としてのバックグラウンドを持つ方が御自身の体験を

活かした作品をものされて、それなりに読ませる臨場感溢れる

作品を発表されていますが・・・


マリコ先生が医療小説?大丈夫ですか?

ちなみに新潮社のキャッチコピーは・・・


>東京、ジュネーブ、アンゴラバンコクを舞台に、

>さまざまな問題を抱える現代医療の世界を鮮烈に生き抜く

>女を描く、衝撃のメディカル・ロマン

 

 はい、これを誇大広告といいます(爆笑)

 

 この方は何を書いても「林真理子」の味付けなのね(ため息)

センセイの手にかかると、WHOでさえも、なにやら胡散臭く

感じさせられてしまう。お見事です。


こんな女がメディカル・オフィサーとして働いているのかと

読者に思わせるのがセンセイの御趣味なのでしょうか?


ちなみに、この作品のモデル?となられたS・N子氏は

新潮社のHPで以下のように語っておられます。


以下、一部抜粋


>私がモデルのはずのヒロイン佐伯志帆子は、

>しょっちゅう私と違うことを考え、

>私が今までにしでかした失敗や犯した罪を元に作り上げた

>人生の「グラウンドルール」を無視した言動をとる。


>とくにわが国の新型インフルエンザに対する水際作戦を

>批判的にみていたりして

>声を出して笑ったりする。

>だめ、そんなの、絶対にありえない。


>WHOのメディカルキットからフィールド活動用のコンドームが

>出てきたときには、好奇心で目を輝かされていた。

 

 誠に申し訳ありません、S・N子先生。

どのような崇高な使命を帯びた方であろうとも、

マリコ先生の筆にかかると、下品・下世話・下卑た・と

三拍子そろった俗臭紛々たる人間になってしまうのですから・・・


聖なるものを俗に引き落とす、というのは

小説技法上、別に目新しいことでもないし、別に悪いとも思いません。


しかし、林真理子氏の作品には、登場人物に人間的魅力が

感じられないのです。


前から疑問に思っていたことですが、

林氏はこの作品に限らず、自分の作小説世界のヒロインのことを

愛してはいないのでは?

(但し、林氏を投影させたような初期作品は別です)


美しい人も優れた才智を持つ人も、隙あらば貶めてやろうと

舌なめずりしてしているとしか思えないような・・・?


まるで、何者かに復讐しているような・・・

だから、ヒロインに魅力がないのかしら・・・?


さて、この物語のバツイチ・ヒロインの女性医師・志帆子は

WHOのメディカル・オフィサーという職についています。

しかし小説ではこの仕事ぶりがほんの上っ面でしか語られません。


何をやっているのかよく分からないが、大酒のみで美食に舌鼓を

うつ、性的に奔放な女性としての印象しかない。

 

 小説の後半で、別れた夫の再婚相手である結花が出産時の医療事故

もしくは不可抗力(?)で母子共に死亡という悲劇が起こります。


医療小説と自称するならば、これこそが山場になるはずなのに

さすがのマリコ先生、期待通りの肩透かしでした。


マリコ先生、専門家にしっかりレクチャーしてもらい、原稿の

チェックまでしてもらったというのにね。


特に、医療裁判の場面では、

なまじ帚木蓬生氏の『インターセックス』のエピローグ部分と

似ているだけに、「えっ、これでもう終わりですか?」という

あっけなさ。


帚木蓬生の作品は、本筋ではなくほんのツカミで

描かれていただけですが、筆力の差は歴然としています。


また、ヒロインの一人娘も医大生で、解剖実習の場面なども

るのですが、作家として本当に納得のいくように調べたら

もっときちんと書くべきことがあるのでは?

単なるアホな女子大生と変わらないのですが。

 

特に最終章の終わり方は拡げた風呂敷をまとめ切れず、

どさくさ紛れに慌てて畳んだ印象がぬぐえません。


ヒロインが男性とベッドイン中に、3・11の地震が・・・

こうしてはいられない、私たちにはやるべきことがあるのよ!

と言って被災地に駆けつけようとする、チャンチャン・・・?

 


ほとんどギャグです。

 

 狙ってやったのですか?と思わせるほどのひどさ・・・

多分、ご本人は大真面目で描いたのでしょうが・・・

 

それとも、余りの出来の悪さに連載が打ち切りになったのか?

いや、しかし、それならば単行本にする際に加筆できるだろうに。

 

 さてと・・・


明日は知人にこの本を返しましょう。

そして、こう言ってやろうかなー

 

 

「あなた、林真理子なんか読んで恥ずかしくないの?」(大爆笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステマじゃないよ『群ようこのおすすめ良品カタログ』

B級・C級もしくはそれ以下のタレントたちが、やらかしてくれた

自身の公式ブログでのステマ騒動・・・

 

企業(またはエージェント)からお金(広告費?)を

貰っておきながら、知らん振りして「私の愛用品です!」

「コレいいよ!」と宣伝する手法のこと、ね。

 

CMとは分からないように巧妙にCMをさせているのでしょうが

それ以上に、ネット上には、いかにもそれ臭いペラサイトが

溢れてはいますけれども(爆)

 

まあ、信じるも信じないもその人の見識次第でしょうね。

その意味ではリアルもネットも同じことです。

 

リアルでは「テレビで言ってた!」というのを100%信じる

善男善女も多数いらっしゃることですし・・・

 

結局のところ、人は自分が信じたいものを信じるのでしょう。

 

 

閑話休題(それはさておき)


・『群ようこのおすすめ良品カタログ』 群ようこ 角川書店


エッセイスト・作家の群よう子氏のエッセイ集。

作家としては、映画『かもめ食堂』の原作者として、認知されて

いるかもしれません。

が、やはりこの方は優れたエッセイストとして評価したい、かな?


初めて群氏の作品に触れたのは、軽い書評モノのコレ↓


・『鞄に本だけつめこんで』 1982年 現在は新潮文庫


このタイトルが、いかにも活字中毒者のツボにはまりまして(爆)

ジャケ買いならぬタイトル買いをしたものです。


読書エッセイ・ブックガイドなのですが、作品内容を自身の生活

引き比べながら、独自の視点で語る姿勢が非常に新鮮に思え、

以来、ファンになりました。


その後、ご自身の家族と動物たちとのいきさつを描いたエッセイ集


・『トラちゃん 猫とネズミと金魚と小鳥と犬のお話』  集英社文庫


を読んで以来は、群氏のみならずそのお母様や弟さんまでが好きに

なってしまいましたわww


これといった賞も受賞しておられない…と記憶していますが

そんな事は気にならないし、おそらくは御本人も賞を欲しがる

タイプの作家ではないように思われるのですが・・・

活字中毒者的にはコレは誉め言葉です)


今日の『群ようこのおすすめ~』は

群氏のエッセイ集の中では、地味目な内容で、あまり好きな方も

見当たりそうも無いので、敢えて取り上げてみました。


タイトルに「カタログ」とありますが、群氏の愛用品を紹介して、

簡単にコメントをつけたものです。


解・美・食・働・楽 のジャンルに分けてあり、

「解」 ならば「解す良品」、つまり解きほぐすというか、

くつろがせるというか、

要は身体が快適に感じるグッズが紹介されています。

マッサージオイルや絹の五本指ソックス、ガーゼケット等々・・・


タレントの小遣い稼ぎのステマとは異なり、どのグッズも

群氏自身が愛用されているものばかり、だと思われます。


なぜならば、氏のエッセイのファンならば、

あ~、分かる分かる、群ようこさんなら、こういうの好きだろうな

と思わせるものばかりだから。


よって、ゴージャスなブランド品は登場しません。

意味の無い装飾過剰なグッズも紹介されていません。

「いま大流行の!」いわゆる「トレンドもの」は登場しません。


もちろん、好き嫌いは充分に有ると思います。

シンプルすぎる・ナチュラルすぎると感じる方も多いでしょうね。

 

それは当然のこととして、いかにも群氏らしくて

かつ印象的な文章があったので

ここに引用しておきましょう。

 

「楽」、楽しいジャンルの中で紹介されていた

「邪悪なネコのポストカード」


擬人化された猫たちがイラストで描かれた輸入物のポストカードで

群氏所有とキャプションが付いていました。


以下、『  』 部分は引用です。


 『 ネコを飼ったことがない人だと、ネコ好きの感覚に対して、

 誤解している部分がある』


↑として、 本当の猫好きは、誰が見ても可愛い猫・欠点の無い猫

はもちろん好きなのですが


 『 どちらかというとすべてが整ったネコよりも、

  不細工だったり、

  性格に癖のあるネコのほうが、好きだったりする』


はい、猫好きはここで深くうなずきますww


 『攻撃的だったりする部分も含めて、すべて許容するのだ。』

 

同感です。はい全く同感です。

で、紹介されている群氏のコレクションが

まあ、いかにも意地悪で性格の悪そうなネコばっかりですよww

そして、最後に記されているのが下記の通りで・・

 

 これが気に入るかどうかで、ネコ好きかそうでないかは、

 すぐに分かる。もしもこれらの、ねちっこかったり、

 暴挙に及んでいる悪いネコたちを見て、大笑いする人がいたら、

 ネコ好きに間違いないのである』

 

あははは・・仰るとおりでしてw

この点が、犬好きと猫好きの決定的な違いなんでしょうね。

嫌なところ・欠点がいくらあろうとも、

そのことが原因で猫を嫌いにはなれないのですよ。

むしろ、こちらを振り向いて欲しいと執着が強まるばかり・・・

相手からの愛が与えられないからこそ、与え続けてしまうw

 

なんだ、これは・・・

そう、或る種の恋愛に通じるものがあるのかも・・・ね?

 

 

 

 

 

タイトルはどぎついけれど…『さあ、地獄へ堕ちよう』

「横 溝 賞 史上 最 年 少 受 賞 者による

           最 凶 の 問 題 作」

 

…という触れ込みなんですが、いや、このキャッチに惹かれて

読み始めてしまったのですが・・・

ハッキリ言いましょうね、これは誉めすぎ(爆)

 

『さあ、地獄へ堕ちよう』 著者:菅原和也 角川書店

 

著者のプロフィル写真だけ見て、てっきり10代の少年かと

思っていたのですが、24歳か・・・

 

決して若すぎる年齢ではないと思うのですが、横溝賞の性質上、

応募者の平均年齢も高いと思われるので、「最年少受賞者」

には違いないのですが。

 

会話も地の文も、いまどきの若者言葉という感じで綴られている

ため妙に軽く、あっという間に読み終えてしまいました。

ラストも、ミステリや小説を読みなれた方には予定調和と

言うべきか、肩透かしというべきか・・・

 

しかし、私はこのラストで良いと思います。

 

 

SMバーでM嬢として勤務するミチがヒロインです。

彼女はSでもMでもありませんね、本質はノーマルで

いたって健全なところがあるような?

 

まあ、勘違いばかりのダウナー系なんですが、その割りに

行動力があるので(苦笑)読者は存分にミスリードされて

お話は順調に進行して行きます。

 

お定まりの裏サイトやら、自殺系のSNS、SM、ピアッシング

身体改造(美容整形ではない!)などなど・・・

 

マジメなおじさん・おばさんの知らない刺激的な世界が続々と

現れてきます。(読んでいるだけで痛くなる人もいるかな?)

もう、これだけで「現代的ですごい!」と勘違いしそうですね。

 

しかし、表面に見えるこうした行為は単なるツールに過ぎません。

 

ミステリ、というよりは・・・

現代的な衣をまとってはいるけれども、実は、古典的な

青春小説(←古い表現だね)として読むとなかなか

面白いではありませんか。

 

つまり、痛みや苦しみ(文字通りフィジカルな意味で)を

ともなった作品という意味での青春小説です(苦笑)

 

ピアッシングやタトゥーも一、種の身体改造なのですが

その行為がエスカレートして行くと・・・

もう、**しかないよね?

 

だとすると・・・

これは普遍的かつ古典的な文学のテーマではありませんか!

 

ただ、身体改造のプロセス描写が、私には少々物足りない・・

多分、著者自身の見聞きしたことも反映されていると察せられ

るのですが、もっと細かく描写してくれたら、作品に

いま以上の凄みが出たでしょうに・・・

 

眼で見る描写だけではなく「臭い」まで感じさせてくれたら、

さらにさらに・・・グロくなりすぎるかしら?

まあ、こういう描写が苦手な方には拷問としか思えない・・

かもしれませんが(爆)

 

まあ、いずれにせよ、著者の菅原氏は24歳の若さです。

次回作は、ミステリではなく純文学系の作品を期待します!